夏風邪

ペースト状に練られた汗が気化して、まず面積の広い背中から体温を奪い去る。けれどもこの炎天下におかれたおめでたい頭は、体温の調節ダイヤルを虚数ではなく出鱈目な変数に合わせてしまうようで、歩く方向はおろか目の焦点さえ定まらない。渇いた喉には水飴のような淡がつねに絡みついていて、強く咳きこむと黒い染みが手に残る。それを濁音記号にみたてて人差し指でなぞるのは、まだ余裕がある証拠かもしくはただの健在誇示。
食べ物がないだとか超貧乏だとか、こういった取り留めのない事柄は、かぎ括弧に括って箇条書きリストにでも収めるのがいちばん手っ取り早いと思うのですが、僕はそれを大の苦手とする人間ですから致しかたありません。『ダイアログ』の名前が泣いています。
http://super.win.or.jp/~metanki/kadan/maturi.htm