祖父のこと

祖父は国内で有名な宮大工で、全国を渡り歩いていた。政治家のひととも繋がりをもっていたらしく、葬儀のときにはたくさんの花輪が届いたのを憶えている。

実家の1階にある曲尺手には、いまでも祖父のつくった精密な設計図がかけてあって、それをみるたび息を呑む。

手は青白く脈が透き通っていて、痩せ細り骨ばっていた。祖母が痴呆になりかけていたころ、ぼくの手をとって「職人の手だわ」といってくれたのはずっと忘れない。

自信をもつことは難しいけれども、手のことは誉められると素直に喜べる。誇りをもっていきたい。