フラッシュ・メモリ

人間には記憶を想起させるフラッシュ・メモリなるものが7つ搭載されているといいます。成人を境にして思考能力が落ちることはあっても、それはマイナス5度くらいの下降度でしかなく、精神力は逆にプラス30度くらいの上昇度を60歳あたりまで保ちつづけるとか。

台風のせいか季節の匂いもしないまま、いつのまにか秋になってしまいました。最近は Sugar Ros の『()』というアルバムや Delerium の『Innocente』というシングルばかりを聴いているのですが、前者は冬の暖かいストーブの匂いを醸しだしてくれていて、後者は2年ほどまえに神保町をよく徘徊していたころの情動を思いださせてくれます。音楽が流れていないと、思考の回転力が無駄に上がってしまい、とてもではないですが安寧を得られません。しかし、その効力も次第に薄まってきました。

要は寂しくて誰かと繋がっていたいのではないでしょうか。真夜中にソファに座りながら、ふと窓の外のほうをみやると、自分と同じ考えをもったひとがどこかにいるのではないか、或いは自分がとあるひとのことを思いだすのは相手も自分のことを思いだしてくれているのではないかと、自覚のある心地よい妄想に辛うじて酔うことができます。ただ、それが過剰すぎて尚且つマイナスに思考が働いてしまうとあられもないことになるので、シングルタスクな自分は指の動きを休めなにもできなくなってしまうのです。ひょっとしたらフラッシュ・メモリが複素数方向へ働いているのかもしれません。