ブレイン・ストーム

情念の消え失せた思考の波が複素数方向へ流れていて、円環的に旋回してはいないものの、これまでに好奇心の赴くがまま自然と吸収してきた体系化されていない知識とそうでないものとが、まるで記憶の抽斗が一時に開いたみたく表層意識へ湧き起こってきており、それらを語ると傍目からみて脈略のないものに映っていようとも、私のなかではセグメントからイマージュへ、些末的なものから形而上学的なものへと関連づき飛び火をしている。思考の新陳代謝が非常に烈しく、17才のころの自分が現在の自分に憑依しているようにも感じられるし、風邪っぴきの幼児が抱く熱っぽい身体感覚も同時に蘇りつつあるかのようだ。

このような性質をもった人間では友人ができないのも当然であろう。親しき仲にも演技ありといった弁も云い得て然りだが、他者とのディスタンスの測りかたがとかく困難で、鋼鉄の子宮に未だ包まれたままの慢性モラトリアム人間であるという容態も依然として変調する気配をみせず、愛情のこもった残酷な優しさをもてないでいるのだから。無償の愛を惜しみもなく注いでくれた祖父と祖母のことを思い出すと、あまりの情けなさから号泣してしまうほど申し訳がたたない。