グスタフ・マイリンク『ゴーレム』

ぼくは、この家並みに影法師のように住む不思議な人々を心のなかに思い描いた。――母親から生まれたのではなく――その考えることやすることを見ていると、なにか木切れか土くれからでたらめにつくられたかのように思われるその不思議な生きものたちがぼくのまえを通り過ぎていく。

「タロックには切札が二十二枚――ちょうどヘブライ語のアルファベットの数だけあるということに、あなたは一度も気がつかれなかったんですか? わたしたちのボヘミアのカードには、おまけに、見るからになにかの象徴だろわかる絵まで、つまり愚者、死、悪魔、最後の審判なんかが描かれているでしょう?――いいですか、あなたは、だからほんとは、人生があなたの耳に答えを叫びかけるのを、大声で求めておられるのじゃありませんか?――――むろん知る必要もないことでしょうが、『タロック』とか『タロット』というのは、ユダヤの『トーラ』つまり律法とか、エジプト語の『タルト』つまり『問いかけに答える女』とか、大昔のペルシア語の『タリスク』つまり『わたしは答えを求める』などと同じ意味の言葉なんです。――学者たちは、タロックがカール六世(神聖ローマ皇帝ボヘミア、ハンガリア両国王、在位一七一一−一七四0)の時代にできたということを考証するまえに、このことを知るべきだと思いますね。」

「そなた、全能なる者よ、その御名をわれら人間が口にしてはならぬ者よ、ぼくはここにそなたのまえにひざまずきます。ぼくの父が永遠に呪われて、呪われて、呪われていますように!」

グスタフ・マイリンク著『ゴーレム』より