imaginary companion

「血圧や心拍数などのパラメータを正確に解析する生体モニタリングシステムにより、各種薬剤を的確に選別し投与することが可能になりました」と、さも得意げな口調で講釈をたれる看護婦の指し示す先には、空気をいっぱいにはらんだヒトの肺と同サイズかそれよりもひとまわり大きいくらいの薄汚れたシリンジポンプがあり、その下ら辺でアナログ計測器の黒い針が左右にせわしなく振れ動いていた。

コンピュータで完璧な制御をされたそれら延命装置は互いに連動して入力と出力の処理を繰り返すばかりで停まることを知らない。開発者の恣意により定められたメソッドをただ黙々と流れ作業式に受け渡す、がらんどうの半永久機関。背面から大小さまざまな管やケーブルの類といったものを蛸足のようにたるませたその佇まいに、いささか無骨なつくりのパペットを連想する。僕はあんまりにも絵にならないそれを視界の外でしばらく躍らせてから、適当に苦笑いで揉み消してやった。そのとき唇の左右両端が、上下あべこべに引き攣れていたのを思いだす。