Mind Design

シュルレアリスムから派生した耽美派の原型を築き、機械工学と形而上学との融合を果たしたドイツのビスクドール創始者ハンス・ベルメールHans Bellmer)の作品は、日本の人形師たちに多大なる影響を与えた。

著書『イマージュの解剖学』というエッセイにはポール・エリュアール(Paul Eluard)の詩を引用し、甘美な妄想がいかに昇華され作品に影響を齎しているのかがみてとれる。まるで放課後の学校にある掃除用具置き場に閉じこめられているような匂いを発しており、ぼくは夢中になって貪り読んだものだ。

写真集『HANS BELLMER photographe』には、愛妻であるウニカ・チュルン(Unica Zurn)の緊縛写真を載せ、肉体美や生への渇望と、それとは相反するネクロフィリアとのアンビバレンツを巧く具現化した。ちなみにウニカ・チュルン(Unica Zurn)が闘病記として書いたエッセイ『暗い春』は、ジャン・コクトーJean Cocteau)のエッセイ『阿片-或る解毒治療の日記-』を凌駕するほどの出来栄えである。

デザインは理詰めであると誰かがいっていたが、氏の作品をみるとそのような言葉は吹き飛んでしまう。ユートピストが主知主義の最後の拠点としてアルケテュプス(原型)への探求へ赴くのはけだし当然であるが、それは一種の真実を目の当たりにした単なる逃避ではないだろうか。

四半世紀が過ぎようとも微塵として薄れない感動を与える作品をぼくもつくってみたいところであるが、現在は自己を救済することすらできていない。